独立系ジャーナリストと哲学者と臨床医と武道家とリスク管理研究者が一堂に会して、災害時におけるコミュニケーションのあり方について語る機会というのは、なかなかないものであり、その組み合わせの妙が本のひとつの売りであります。
「これからの日本人はみな放射能と一緒に暮らしていくしかない」という上杉さんの重い発言も、岩田先生の非常時の現場における寡黙さについての発言も、鷲田先生が提示する我々の生活をささえてきた基盤そのものに対する疑義も、内田先生の情報の格差化・階層化にたいする懸念も、藏本先生の指摘する大企業の情報公開の甘さも、みなそれぞれ説得力があります。
本の性格上、議論を重ねたうえでなんらかの提言をまとめるというものではありませんが、各人の発言のなかに読者の方それぞれが自らのものとしてすくい取れる部分があれば、それを生活の現場においていかしていっていただければと思います。
なお、本書の印税は、震災復興の義捐金にあてられます。