2012年7月9日月曜日

『プラグマティズムの作法』について、中野剛志先生より推薦文をいただきました

ご好評いただいております、藤井聡先生の『プラグマティズムの作法』、重版も出来上がりまして絶賛発売中です。
今回の重版にあわせ、中野剛志先生より推薦文をいただきました。中野先生は、この5月まで、京都大学で藤井先生と同じ研究室に在籍、「レジリエンス研究ユニット」として基礎研究および具体的な政策提言を進めておられた、いわば同志とも言うべきお方です。
 では、中野先生の推薦文をどうぞ。


『プラグマティズムの作法』を推す
中野剛志

この二十年間というもの、「閉塞感」という言葉を聞かない日はない。確かに、日本は、政治も経済も社会も文化も、会社も学校も親戚づきあいすらも、すべて、閉塞感に覆われている。これまで何度も、「閉塞感の打破」を目指して、もっともらしい改革が提案され、実行されてきた。しかし、逆に閉塞感は深まるばかりだ。

ここまで病膏肓に入ると、日本人の精神や思想が、根本のところで、何か大きな間違いを犯していると考えるしかない。

その根本問題を、藤井聡教授は、ずばり「プラグマティズムの不足」だと診断する。そして、日本中を覆う閉塞感の迷路から抜け出る「導きの糸」として、「プラグマティズムの作法」を提示する。
その作法とは、一つに、目的を見失わないこと。そして二つに、お天道様に顔向けできないような振る舞いはやめること。

「なんだ、それだけのことか」と言うなかれ。それだけのことが、いかにできていないことか。

本書があげる多数の具体例を読めば、賢明なる読者であれば、心当たりがあるはずだ。そもそもの目的を忘れ、目先の利益や形式に異様に執着し、しまいには周囲の人々を巻き込んで、閉塞感の檻の中に閉じこめる。そんな振る舞いが、企業でも、学界でも、政治でも、行政でも行われている。その無数の積み重ねの結果が「失われた二十年」だ。

デフレ不況、世界的な経済危機、大震災、政局の混乱……。日本はさらに「閉塞感」の雲に覆われている。だが、この暗く厚い雲を振り払うのに、「抜本的構造改革」も「維新」もいらない。それらはむしろ閉塞感の原因なのだ。やるべきことは、我々一人一人が常識に立ち返り、今一度、自分の行動の目的が何か、それがお天道様に顔向けできるものか、問い直しながら、日々の具体的な問題を解決していくことだ。

この易しいようで難しい作法が、これ以上ないわかりやすさで書かれている。本書自身が、プラグマティズムの作法を実践しているのである。